トレンドの色は? 2025年、特別な一枚に出会う。最新着物トレンドと賢い選び方

2025年、着物の世界は、伝統への敬意と現代のライフスタイルが融合し、かつてないほど多様な広がりを見せています。特別な日のための「衣装」から、自己表現のための「ファッション」へ。その変化は、私たちが着物を選ぶ基準にも影響を与えています。

ここでは、2025年の最新トレンドを踏まえながら、「どのような着物が存在するのか」「それぞれの価値はどこにあるのか」を深く掘り下げます。高価な逸品から、実用性で高い評価を得ているもの、そしてその中間に位置するバランスの取れた選択肢まで。ご自身の価値観に合う、特別な一枚を見つけるための一助となれば幸いです。

目次

2025年、着物の「今」を知る:注目のトレンドキーワード

まず、2025年の着物市場全体を動かしている大きな流れを3つのキーワードでご紹介します。

トレンド1:主役は「白」と「くすみ」— “余白の美”への回帰

2025年の振袖市場で、レンタル人気1位となっているのが「白地×くすみカラーの柄」です。これは、従来の「隙間なく柄を埋め尽くす豪華絢爛さ」とは異なる美意識の台頭を示しています。

柄自体は、成人式らしい華やかさを持つ「大きめの花柄」が引き続き人気です。しかし、その表現方法が変化しています。色数をあえて抑え、白地という「余白」を活かしたすっきりとしたデザインが、「大人っぽい」と評価されています。

これは単なる「白ブーム」ではありません。洋装のファッションで重視される「抜け感」や「透明感」といった感覚が、和装にも強く求められていることの表れです。この流れは振袖に限らず、夏のフォーマル着物である「絽(ろ)の訪問着」においても、「透明感」「涼やかさ」がキーワードとして浮上していることからも裏付けられます。

白地やくすみ系カラー(薄ピンク、ベージュ、オフホワイトなど)は、従来の着物が持っていた「重厚長大」「着るのが大変」というイメージを和らげます。同時に、TikTokやInstagramといったSNSでの「写真映え」においても、清潔感や洗練さを演出しやすいという、現代ならではの実利的な側面も持ち合わせています。

トレンド2:再評価される「定番色」— シックな赤と知的な寒色

もちろん、伝統的な色も根強い人気を誇ります。ただし、その色味には変化が見られます。

  • 王道の「赤」: 鮮やかな赤色ではなく、深みのあるシックな色味の「赤地」がトレンドです。大きめの柄と合わせることで、古典的な格調を保ちつつも、現代的な華やかさを表現できます。
  • 人気の「黒」: シックで洗練された印象を与える「黒地」は、鮮やかな柄を最も引き立てる色として、他人と差別化したい層に安定した人気があります。
  • 急上昇の「寒色系」: 2025年に特に注目されているのが、水色、青、緑、紺といった「寒色系」です。赤やピンクなどの暖色系よりも知的で落ち着いた雰囲気を演出しやすく、人気が急上昇しています。
  • 注目の「紫系」: 古くから高貴な色とされる紫も、グレーがかった色味がトレンドです。流通量が比較的少ないため、個性を大切にしたい方にもおすすめです。

トレンド3:異素材ミックスとワントーン — “着こなし”で遊ぶ時代

2025年の着物トレンドを語る上で最も重要な変化は、着物本体のデザイン以上に、「コーディネートで個性を出す」という意識が主流になったことです。

特に注目されているのが、帯や半衿(はんえり)にオーガンジーやレースといった「シアー素材(透ける素材)」を採用するスタイルです。これは、トレンドキーワードである「透明感」を、素材そのもので表現する手法と言えます。

また、着物、帯、小物をすべて同系色で統一する「ワントーンコーデ」も、洗練された上級者の着こなしとして人気を集めています。

着物が「衣装」から「ファッション」へと移行しているこの流れは、一部の先進的なブランドの動向にも表れています。例えば、KIMONO by NADESHIKOは2025年春夏コレクションとして、着物の上から羽織れる「シアー割烹着ワンピース」や、帯締めとして使える「牛革ベルト」を発表しています。

これは、既存の和装小物の枠組み自体を解体し、現代のファッションアイテムとして再構築する試みです。こうした自由な発想は、あえてレザーブーツやパーカーを組み合わせるような、大胆なコーディネート提案にも繋がっています。ただし、この「自由化」には、後述するTPO(時・場所・場合)に関する注意点も伴います。

【高価格帯】憧れの逸品:受け継がれる伝統と価格の理由

「値段が高い商品」とは、どのようなものでしょうか。ここでは、高価格帯の着物がなぜ高価なのか、その価値の源泉となっている「技術」「歴史」「素材」について解説します。これらは単なる「商品」ではなく、「美術工芸品」あるいは「文化資産」としての側面を持っています。

最高峰の技術:人間国宝の作品

日本の工芸技術の結晶として最高級品に位置づけられるのが、人間国宝(重要無形文化財保持者)が手掛けた着物や帯です。

これらの価格は、まさに「時価」であり、一般的な呉服市場とは一線を画します。例えば、友禅の初代・羽田登喜男氏の作品は「超レア商品」とされ、非常に高額な価格が提示された記録もあります。

ただし、この市場は非常に特殊です。百貨店や高級呉服店で扱われる新作・新品は極めて高額ですが、一方でリユース市場(中古)も存在します。フリマアプリなどでは、人間国宝(例:中村勇二郎氏の江戸小紋)の落款(らっかん)が入った着物が、数万円から十数万円程度で取引されているケースも見受けられます。

これは「本物を所有したい」という欲求と、現実的な価格との接点ですが、真贋(しんがん)の見極めや、中古品としての状態(シミ、匂い、寸法)の確認は極めて難しく、高い専門知識を要する「ハイリスク・ハイリターン」な領域であることは間違いありません。

京友禅の老舗:「千總(ちそう)」の訪問着

470年以上の歴史(1555年創業)を持つ京友禅の老舗「千總」は、高級呉服の代名詞的存在です。同社は2025年の新作として「花と鳥と 2025 Collection」も発表しており、その美意識は常に注目を集めています。

その価格帯は、公式オンラインショップで販売されている訪問着を見ても、70万円台から90万円台(税込)といった価格が中心です。これらはすべて、熟練の職人による手描き友禅、繊細な刺繍、柔らかな絞り染めなど、膨大な時間と伝統技術を投下して生み出された作品です。

こだわりの専門店:「銀座もとじ」の企画

銀座もとじ」や「銀座きもの いちは」のような、現代の目利きとして知られる高級呉服店も、高価格帯市場の重要な担い手です。彼らは単に歴史ある商品を販売するだけでなく、独自の哲学に基づいた商品を企画・開発しています。

一例として、「銀座もとじ」は「銀座生まれの大島紬」というプロジェクトを再始動させました。これは、大島紬の発祥地である奄美大島・龍郷町(たつごうちょう)とのパートナーシップのもと、伝統的な龍郷柄の新作を550,000円(税込)で提供するものです。店舗で制作工程の一部を見せるなど、着物を「買う」だけでなく、その背景にある物語や技術に触れる「体験」としての価値も付加しています。

高価格帯の共通点:素材の頂点「正絹(しょうけん)」

これらの高級品のほぼすべてに共通するのが、「正絹(しょうけん)」、すなわちシルク100%で作られているという点です。

正絹の価値は、その見た目の美しさ(上品な光沢感)だけではありません。むしろ、着物としての実用的な機能性にこそ、その本質があります。 正絹の繊維は、人肌に近いタンパク質成分でできているため、肌触りが非常に優しく、着心地が良いのが特徴です。さらに、ポリエステルなどの化学繊維と比べて生地が滑りにくいため、着付けがしやすく、一度着付けると着崩れしにくいという、着物を着る上で非常に大きなメリットがあります。

【高評価】賢い選択:現代のライフスタイルが認めた実用性

「評価が高い商品」に目を向けてみましょう。これは、前述の「価格」とは異なる軸、すなわち「ユーザー満足度」と「現代のライフスタイルへの適合性」で選ばれている商品群です。 2025年において、この分野を席巻しているのは、間違いなく「高機能な洗える着物」です。

「洗える」という絶対的な安心感:KIMONOMACHI

特に着物初心者や、お稽古事などで日常的に着る層から絶大な支持を得ているのが、「自宅で洗える」ポリエステル素材の着物です。

中でも「KIMONOMACHI」ブランドの2025-2026年新作は、レトロモダンやアンティーク着物風の古典柄など、デザイン性の高さが際立っています。あるオンラインストアではレビュー55件で平均評価4.5以上、別のストアでは282件のレビューで総合評価4.46と、極めて高いユーザー満足度を獲得しています。

レビューを詳しく分析すると、高評価の理由は単に「安いから」ではないことが分かります。「自宅での洗濯ができるところが大きなポイント」「つくりはしっかりしている」「ポリ(ポリエステル)の着物にしては着やすく、着崩れもしにくい」といった声が目立ちます。

つまり、「手入れの容易さ」と、「価格に見合わない品質(デザインと縫製)」こそが、現代の消費者から高い評価を得ている理由です。

絹に迫る質感:高機能ポリエステル「東レシルック

「ポリエステルは安っぽい」「静電気がひどい」といった従来のイメージを根本から覆したのが、東レが開発した高級ポリエステル生地「東レシルック」です。

シルックの優位性は、その成り立ちにあります。

  1. 絹に近い構造: 絹の糸が多角形の断面を持つのに対し、シルックもそれに近い多角形の断面で設計されています。これにより、絹のようなしなやかな風合いと美しい光沢、ドレープ性を実現しています。
  2. 伝統的な染色: 絹を染めている京都の職人が、シルックの生地に対しても、変わらない手作業(刷毛を使った染色など)で加工を施しています。
  3. 機能性の付加: 静電気防止加工が施されており、ポリエステル特有の「まとわりつき」が大幅に軽減されています。

このため、東レシルックは初心者だけでなく、むしろ着物を知り尽くしたベテラン層(40代以上)からも、「正絹にも引けを取らない」と評価されています。雨の日のお茶会や水屋仕事(みずやしごと)など、高価な正絹の着物を汚したくない、しかしTPOとして格好は崩したくない、というシビアな場面で選ばれる「実用的な高級品」としての地位を確立しています。

【総合バランス】日常に寄り添う:価格と実用性の最適解

「総合バランスが良い商品」は、購入者の「目的」によって最適解が変わる、最も戦略的な選択が求められる分野です。ここでは、目的別に2つの明確なルートをご紹介します。

ルートA(安全・手軽):KIMONOMACHIのフルセット

  • 目的: とにかく着物デビューがしたい。初期投資を抑え、手入れの心配を一切せずに「着て出かける」という体験を最優先したい。
  • 商品: KIMONOMACHIの「はじめてのきもの」フルセット。
  • 分析: 袷着物、京袋帯、帯揚げ、帯締め、長襦袢、草履から着付け小物一式まで揃った19点フルセットが42,729円(税込)、着物と帯の2点セットが23,100円(税込)など、価格が極めて明瞭かつ安価です。前述の通りユーザー評価も非常に高く、デザインもトレンドを押さえているため、初心者にとっての「総合バランス」は最強と言える選択肢です。
  • 弱点: あくまでポリエステルであるため、正絹の持つ独特の質感や着心地は得られません。

ルートB(探求・本物志向):リサイクル着物(正絹)

  • 目的: ポリエステルではなく「正絹」の質感が絶対に良い。しかし、新品(数十万円)は高すぎる。
  • 商品: 専門のリサイクル着物店(例:銀座きもの青木リサイクルきもの福服など)や、オンライン(楽天市場など)で扱う中古の正絹着物。
  • 分析: 最大の魅力は、価格です。新品では手の届かないような高品質の正絹着物や帯が、数万円、時には数千円で手に入る可能性があります。また、すべてが一点物であり、自分だけのデザインを探す「宝探し」のような楽しみもあります。
  • 弱点: これは「ハイリスク・ハイリターン」な選択です。成功すれば最高のコストパフォーマンスを発揮しますが、失敗(サイズが合わない、写真では見えないシミや匂いがある)の可能性も常に伴います。購入には、信頼できる専門店の直営サイトを選ぶことや、レビューを精査するなどの慎重さが求められます。

【提案】2025年 着物購入タイプ別比較表

これら「高価格帯」「高評価」「総合バランス」の選択肢は、それぞれ「価格」「質感」「手入れ」「リスク」において一長一短があります。ご自身にとっての「総合バランス」がどこにあるのかを判断するため、以下の比較表をご参照ください。

比較対象目安価格帯(着物単品)主な素材質感・着心地手入れの容易さリスク・注意点
高価格帯
(例:千總
700,000円〜正絹◎ 最高。
着崩れしにくい。
× 不可。
専門クリーニング必須。
保管に注意。
高額。湿気・虫害のリスク。
高評価
(例:東レシルック
50,000円〜100,000円高機能ポリエステル○ 絹に近い。
静電気が起きにくい。
◎ 洗濯機丸洗い可。ポリエステルとしては高価。
総合バランス (A)
(例:KIMONOMACHI
10,000円〜20,000円ポリエステル△ 実用的。
着やすい。
◎ 洗濯機丸洗い可。質感は正絹に劣る。
静電気が起きやすい可能性。
総合バランス (B)
(例:リサイクル品)
5,000円〜50,000円正絹・その他○〜△(状態による)×〜△(素材による)× サイズ確認、
シミ・汚れの確認が必須。

【注意点】着物と上手に付き合うために

最後に、2025年の着物トレンドを楽しみ、賢い選択をする上で、知っておくべき「落とし穴」と「基本ルール」をまとめます。

注意点1:TPO(時・場所・場合)の基本原則

着物の世界で最も重要なルールが、TPO(時・場所・場合)です。着物には洋服以上に明確な「格(かく)」があり、TPOを間違えることは、洋服で言えばTシャツやジーンズで結婚式に出席するようなものと見なされます。

非常に簡単な分類として、以下のように捉えると分かりやすいです。

  • カジュアル(普段着): 木綿、ポリエステル、紬(つむぎ)など。
    (洋服でいうTシャツ、ブラウス、ウールのパンツ)
  • フォーマル(よそ行き): 正絹の訪問着、色無地、格の高い江戸小紋など。
    (洋服でいう上品なワンピース、スーツ)

この原則を無視すると、ご自身だけでなく、ご一緒される方や、その場の主催者にも恥をかかせてしまう可能性があるため、最低限の知識として押さえておく必要があります。

注意点2:カジュアル化の「許容範囲」

近年、着こなしは非常に自由になりました。スニーカーやブーツを合わせるスタイルもその一つです。

これらの着こなしは、あくまで「普段着」の範疇(はんちゅう)で楽しむものです。友人とのランチや花見、お祭りといったカジュアルなイベントであれば、素晴らしい自己表現となります。

ただし、守るべき一線があります。結婚式や式典、お茶会といったフォーマルな場では、ブーツやスニーカーは厳禁(NG)です。唯一の例外として、卒業式の「袴(はかま)」にブーツを合わせるスタイルは、定番として広く認められています。

注意点3:購入時の「落とし穴」

  • ネット購入の罠(色と柄): KIMONOMACHIのような高評価の商品レビューの中にも、「もう少し柄がはっきり見える画像があればよかった」「モニターで見た色と実物の印象が違った」という声が少数ながら存在します。 これは、まさに2025年のトレンドである「くすみカラー」や「淡い色」こそが陥りやすい罠です。微妙なニュアンスの色合いは、PCやスマートフォンのモニターで正確に再現することが難しいためです。
  • リサイクル品の罠(状態): 前述の通り、リサイクル品は「サイズ」「シミ・汚れ・ほつれ」の確認が命です。オンラインで購入する場合は特に、信頼できる店舗か、状態表記が詳細かを慎重に確認する必要があります。

注意点4:【最重要】”モダン素材”のお手入れの罠

最後に、2025年のトレンドを楽しむ上で、最も見落としがちな「落とし穴」を指摘します。それは、トレンドの「異素材ミックス」がもたらす、お手入れの複雑さです。

「ポリエステルの着物は洗濯機で洗える」というイメージが先行していますが、そこに「レース」や「オーガンジー」の小物を合わせると、話は一変します。

  • オーガンジー素材: 基本的に「手洗い」です。洗濯機は使えません。ぬるま湯におしゃれ着洗剤を溶かし、優しく揉み洗いする必要があります。
  • レース・刺繍・ビーズ付きの半衿: これらは、素材がポリエステルであっても「自宅で洗えない」と考えた方が安全です。手洗いですら、刺繍部分がよれたり、周辺の布地だけが縮んだり、色刺繍の場合は色落ち・色にじみが発生する危険性があります。

結論として、「洗える着物」のコーディネートは、その中で最もデリケートなパーツによって、お手入れの難易度が決まります。 「ポリエステルの着物(洗濯機OK)」に「レースの半衿(手洗いNG)」と「オーガンジーの帯(手洗いのみ)」を合わせた場合、そのコーディネート全体の手入れの難易度は、一気に「クリーニング推奨」へと跳ね上がります。

着物本体の素材だけでなく、コーディネートする小物の素材とお手入れ方法まで確認すること。それこそが、2025年の着こなしを賢く楽しむための、最も重要な鍵となります。

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この記事を書いた人

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※記事は監修人、ライターのリサーチによって、作成されウリトク編集部によって編集されています。

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