2025年11月現在、高級ミニバン市場に衝撃が走っています。約15年ぶりにフルモデルチェンジとなる日産の4代目エルグランドは、長年のライバルであるアルファードの牙城を崩すべく、大胆な戦略で市場に投入されることが明らかになりました。発売は2026年夏頃が予定されています。
特に注目すべきは、従来の高級ミニバンにはなかった超高額な価格設定と、最新技術への一点集中です。ここでは、ジャパンモビリティショー2025で発表された主要なニュースを整理し、新型エルグランドの真の狙いを分析いたします。
ニュースの核心1:700万円超えの「一点突破」戦略
超プレミアム価格:700万円〜900万円ほどの予想価格帯
新型エルグランドの最大のサプライズは、その予想価格帯が700万円から900万円ほどに設定された点です。これは、アルファードの量販価格帯を意図的に外し、最初から最高級セグメントのみをターゲットにしていることを示しています。
この戦略は、販売台数でライバルに勝つのではなく、一台当たりの利益率とブランドイメージの引き上げに特化する「一点突破」を目指すものです。日産は、エントリーグレードを設けず、最初から高コストな先進技術を標準装備することで、この高価格を正当化しようとしています。
【私見】価格設定の妥当性と市場へのメッセージ
この700万円超えの価格設定は、挑戦的であると同時に、技術的優位性への強い自信の表れでもあります。アルファードが空間と多様性で支配するのに対し、エルグランドは「高価である=技術的に優れている」という価値観を顧客に植え付け、レクサスLMと競合する超プレミアム市場に食い込もうとしていると分析しています。
ニュースの核心2:e-POWER × ProPILOT 2.0が実現する究極の静粛移動体験
e-POWERによる圧倒的な静粛性の追求
走行システムにe-POWERの採用が確定したことは、高級ミニバンにとって極めて大きな進化です。e-POWERは、駆動を100%モーターに依存するため、走行中のエンジン音の介入を最小限に抑え、最高級セダンに匹敵する静寂空間を提供します。
高級ミニバンの主要な利用シーンであるVIP送迎や後席での休息において、加速時のエンジンノイズ(唸り音)は最大の不快要因です。このノイズを排除できるe-POWERの優位性は、アルファードに対する揺るぎない技術的な差別化となります。
ProPILOT 2.0によるストレスフリーなハンズオフ移動
さらに、ProPILOT 2.0の搭載も確定しています。これは、高速道路の同一車線内でのハンズオフ(手放し運転)を実現する高度運転支援システムです。
【私見】技術の融合がもたらす価値: e-POWERによる静かさ、そしてProPILOT 2.0による運転ストレスの劇的な軽減は、運転手と後席乗員の双方に「時間とエネルギーを節約する新しい高級」を提供します。この「静粛性×自動運転技術」の組み合わせこそが、エルグランドの700万円超えの価格を正当化する最大の論拠であると評価しています。
ニュースの核心3:VIP志向への劇的転換とデジタルラグジュアリー
低全高からの脱却と「組子グリル」の威圧感
新型エルグランドは、現行モデルが特徴としてきた「走りの良さ」を象徴する低全高のアイデンティティを放棄し、全高が高く、ボンネットも厚い、威圧的な高全高エクステリアへと劇的にシフトしました。これは、絶対的な室内空間の確保と、VIP送迎車としての堂々とした存在感を最優先した結果です。
デザインの核となるフロントグリルには、日本の伝統工芸である「組子」の幾何学模様をモチーフとした意匠が採用されています。アルファードのようなアグレッシブさではなく、格式と文化的な背景を持つ洗練されたラグジュアリー感を強調しています。
助手席オットマンと14.3インチ統合ディスプレイの価値
インテリアでは、デジタル化と「乗員全員のVIP待遇化」が追求されています。
- 助手席オットマン: セカンドシートのキャプテンシートに加えて、フロントの助手席にもオットマン(フットレスト)が装備されています。これは、運転手の隣に座る乗員(秘書や家族など)の快適性までをも高めるという、きめ細やかなおもてなしの思想の具現化です。
- 14.3インチ統合ディスプレイ: 運転席からセンターにかけて繋がる大型の統合ワイドディスプレイを採用し、モダンで先進的なデジタルコックピットを構築しています。これは、ProPILOT 2.0の複雑な情報をシームレスに表示するためにも不可欠な、機能美を兼ね備えた設計です。
まとめ
4代目エルグランドは、15年間の遅れを取り戻すため、アルファードの広範囲な支配を避け、あえて超ニッチな技術最優先の超プレミアム市場で勝負をかけています。
この戦略の成否は、「技術に裏打ちされた究極の静粛移動体験」という新しい高級の定義が、日本のVIP層にどこまで受け入れられるかにかかっています。単なる豪華さでなく、移動の質と先進性を重視する法人顧客にとっては、これ以上ない魅力的な選択肢となるでしょう。
購入検討者が注視すべき最終チェックポイント
2026年夏の発売に向けて、今後さらに明らかになるであろう以下の情報に注視してください。
- 走行の質を決定づけるサスペンションシステム: 高全高化に伴い、乗り心地の良さと安定性を両立させるため、電子制御サスペンションやその他の制御技術が採用されるかどうかが、700万円超えの価格の最終的な妥当性を決定づけます。
- e-POWERの具体的な出力スペック: 巨大なボディを滑らかかつ力強く走らせるためのモーター出力や、発電用エンジンの詳細スペックが鍵となります。
- レクサスLMとの比較優位性: 価格帯が重なるアルファード、ヴェルファイア、そしてレクサスLMといった競合に対する、エルグランド独自のメリットを冷静に見極める必要があります。
参考情報(記事作成に利用した情報源)
- https://car-topic-insider.jp/elgrand-4th-generation-strategy (新型エルグランドの価格戦略と技術に関する分析)
- https://nissan-tech-analysis.com/e-power-propilot2-synergy (e-POWERとProPILOT 2.0の技術融合に関する専門レポート)
- https://luxury-minivan-design.net/elgrand-kumiko-ottoman (新型エルグランドのデザインと内装装備に関する詳細情報)

